6,部分投げから全身投げそして助走をつけての投げ
最大のボールスピードは助走と身体全体を使って投げるときに得られるが、そのためには一連の運動経過の中で各部分が効率良く動き全体として連鎖していなければならない。
各部分に焦点を当てて観察してみると、各部分でもしなりをつくりボールを効果的に飛ばす動作をしていることがわかる。従って、全身の動きに加えて、各部分を使って投げる動作を習得することは、全身を使用しての効率的な投動作の習得やゲームにおける身体の一部を使用しての投げを状況に応じて使いこなす技術につながることが考えられる。
(1)手投げ;手の平と指の押し出しによる投げ
・図2のように逆の手で投げる手の手首を押さえ、腕の動きを制限する。手首の動きをつかて(所謂スナップ)ボールを投げる。最終的にはボールは人さし指か中指から離れるが、手のひらの速い返しとその中でボールを指で素早く押し出す動作が必要である。
・手首の動きだけでも相当投げることができる。所謂「ぼうだま」と「きれのあるボール」の違いはこの最終的なスナップのあるなしできまると考えられる。
図2 手投げ
(2)前腕投げ;手と前腕による投げ
・図3のように上腕を動かないように肘を非利き手で押さえて投げる。
・手首を先導させて前腕と手でしなりを作り、前腕の動きが固定される最終局面で手のスナップを加える
図3 前腕投げ
(3)腕投げ;上肢を使っての投げ
・上体が動かないように、補助者が両肩下部を固定する。スロアーは腕全体を使って投げる。肘を先導させる中で第一のしなりをつくる。 その動きの最終段階にはいるところで「前腕投げ」→「手投げ」へと連鎖させる。
・投げのスピードの大部分はこの動作から生まれる。
図4 腕投げ
(4)上体投げ
・腕と上体を後方に回旋させながら、バックスイングを行う。
・フォワードスイングは、上体の回旋とともに始まる。
・上体の回旋が終了して固定されるが、この瞬間に胸、腕、手、ボールと結ぶ線に大きなしなりが生まれ、ボールを前方に運ぶ準備がなされる。
・この後腕投げ→前腕投げ→手投げへと運動の連鎖がなされる。
・この一連の運動経過のなかで非利き手の左腕は、ボールが後方へ運ばれるに連動して前方へと運ばれる。
・そして上体の回旋のきっかけを作るかのごとく左腰横へと運ばれ固定される。
図5上体投げ
(5)腰投げ(全身投げ)
・この投げは、全身を使った投げである。
・ボールの後方へのバックスイングに合わせて、上体だけでなく、腰も後方へ回旋される。
・投げは腰の先導によって始まり、腰が回りきったときに大きなしなりが作られる。
・腰→上体→腕(肘の先導)→前腕→手と動き、ボールが加速されていく。
図6 腰投げ
(6)助走(ステップ)を加えての投げ
・ゲームの場面では、動きながらの投動作となる。
・近距離の場合はランニングのままスローがなされるが、スピードや遠くに投げることが要求される場合は、ステップスローや走りのスピードを落とさないで空中に跳び上がって投げるジャンプスローが行われる。
・図7はステップスローを示している。ステップを踏みながら身体全体を移動させ投の準備局面を作り身体全体を使って投げる。
・この方法による投げがボールに最も大きな力を加えることができる。
・図7はステップの方法としては最も一般的なクロスステップを示し、ここでは左足の後方でクロスしているが、前方でも行うことができる。
図7 助走を加えての投げ